一昔前はファミレスは郊外型が主流で、いかにフリー客を呼び込むか頭を痛めたものだ。ところが実際調べてみると、フリーの客などは取るに足らないものであることが判った。売り上げの大部分を占める大事な客は固定客、つまり常連さんなのだ。
人間というのは不思議な動物で、どうも行きつけの店をいうものを持ちたがる。「俺の店」みたいな。そして「俺の店」を持てるようになると、必ず新しい客を得意げに連れてくる。「俺の店」だということを知らしめるため。
したがって、店に入ってくるなり顔を見るだけで、オヤジから「いつものでよろしいですか」などといわれるとそれだけで上機嫌になってしまう。この習性を客扱いに取り入れない手はないのだが、どうもファミレスはこのへんに無頓着なようだ。
今度いつもの常連客がきたら、ファミレス諸君は以下のせりふを言ってみてはいかがかな?
「いらっしゃいませ。今日はなににしましょうか?」
「いつものでいいですか?」
うんうんとうなずいたら、
「味は濃い目で。ブロッコリー抜きで。かしこまりました」
このあたりが次世代へ向けてのファミレス課題だと思う。もっとも「いつものでいいですか」はいつもの商品がなんだかわかっていないとできない。間違って違うものを出したらシャレにもならない。
花柳界にはお馴染みさんという言葉がある。女将はその客のすべての好みを記憶する。その上で気配りをするわけだからその接客レベルは半端ではない。世の中にはそういうレベルの接客業もあるということだ。
ファミレスには不要かもしれない。しかし、勝ち抜いて生き残るにはそういった高レベルな接客を学ぶことも悪くないと思う。とにかく先にやったほうが勝ちだ。
2002/12/22