多くのファミレスで接客の五大用語としてマニュアルに書かれている「少々お待ちください」、これはちょっと考えものだと思う昨今。

忙しく走り回る店員に声を掛ける。返ってくるのがお決まりの「少々お待ちください」。酷い時にはあっちむいたまま、この言葉だけ返ってくる。実際この言葉を聞くだけでアタマに来る。杓子定規。猫も杓子も。バカのひとつ覚え。私は思う「少々も待てん!!」

大体、店員に五大用語を教える前に教えなきゃいけない大事なことがある。それは「そもそもお客は待たせてはいけない」ということだ。「少々お待ちください」はやむを得ない最後の切り札なのだ。なのにこの言葉はファミレスで氾濫している。さも当然のように。

昔、私がやっていた飲食店で60歳を過ぎた女性を店員として使ったことがある。一応私の店にもマニュアルはあり、一通りの言葉使いは教えたのだが、そこは年配者の得意技。ほとんどマニュアルは無視され自己流で通されてしまう。しかし、驚くことにこの自己流がとにかくすばらしいのだ。

飲食店だから昼時などは目が回るくらい忙しい。当然お客に待ってもらう場面が続出。そんな時このおばちゃんは「はーい。ただいま伺います。ちょっと待ってねー」と一人で客席を切り盛りする。これが全然いやみが無く、お客も「おーそうか」と文句も言わず待つ。

私はそのとき、接客とは言葉ではなく人柄であり、天性の素質がものを言うと実感したのであった。しかしアルバイトに依存するファミレスの場合、全ての店員が天性の素質を持っているわけではない。出来の悪いアルバイトも使わなくてはならないのだ。だったら教育するしかない。

どこかのサポートセンターだったか電話の応対で取次ぎをする時「少々お待ちください」ではなく「少しお待ちください」と言われたことを思い出す。何か新鮮なものを感じてその言葉どおり気持ちよく待てたのを覚えている。その前に「待たせない」という努力が必要なのは言うまでも無いことだが。

2002/04/21

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