今日は昔々のお話、ケンタッキーのフィールドマンの話です。

昔ケンタッキーフライドチキン(以下KFC)でお世話になっていた時、時の社長はよく店にきた。といってもKFC本部の社長ではなくフランチャイジーの社長だ。KFCはフランチャイズ制をとっているのでKFCのお店がすべて直営とは限らない。むしろフランチャイズの店のほうが多いのではないか。

社長が来る時は決まって、KFC本部の人間がチェックに来るという情報が流れた時。社長とはいえフランチャイズの社長は立場は弱い。本部から来る人間はフィールドマンと呼ばれる職種の人であるが、コイツがとてつもなく大きな権限をもっている。態度の悪いに店員がいれば更迭を命じることもできるという。普通他の会社の人事に文句をつける筋合いはないのであるが、KFC本部はそれだけ強い権限をもっていた。

フィールドマンはいわゆるスーパーバイザーともちょっと違っていた。私のいたKFCにも数店舗を管理するスーパーバイザーもいた。しかし彼はフランチャイジーの人間であり、KFC本部の人間ではない。フィールドマンは本部の人間であるところが圧倒的な違いだ。

私も数回そのフィールドマンにお目にかかったことがある。彼よりも私のほうが年配であったためそれほど大きな態度は取らなかったが、若い社員に対しては「おい!」「おまえ」と呼んでいた。チキンを揚げている私を捉まえていきなり質問を浴びせたこともあった。私はすんなり答えたが、その前に「ちょっと言葉遣いに気をつけてくれない」と言いそうになった。

ケンタッキーの店は大体朝の9時から仕込みが始まるが、本部の人間が来ると言う噂が流れたときは朝6時には社員は店にいる。そして一生懸命窓を磨いていたりする。本部の人間は順番にエリアを巡回するがあるとき巡回が停止することもある。したがって予想に反して来ないこともたびたびあるのだ。そんなとき社員はほっとする。

フィールドマンのチェック項目は100ヶ所に及ぶ。それをすべてクリアするとプラス4のボーナスが付いて104と記されたバッジをもらえる。KFCをたずねたら社員の胸元をチェックしてみよう。キラリ輝くバッジが見えたら、その店は優良店だ。

KFCにはこのほかにもチェック機能を持っていた。ミステリーショッパーといわれるものである。つまり客を装ってチェックに来るオバサン。なにげなく接客をチェックしたり、温度計を隠し持っていて買ったチキンの温度を測るという。フィードマンは来ればその人とわかるがミステリーショッパーは恐怖だ。いつでも100%の顧客満足度を提供しなければならない。

こうした緊張感は実は悪いことではない。むしろ歓迎されるべきものだ。店が多くなればなるほど、店によってサービスの質がまちまちになる。ばらついたサービスは優良店の足を引っ張る。お客はどこのケンタッキーも同じと見るからだ。一店コケれば皆なコケル。だからチェーン店は怖い。

注:
フランチャイジー=フランチャイズに加盟して実際に店を運営する会社。
フランチャイザー=店の運営システムを提供する人、つまり本部。

2003/02/23

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