吉野家

吉野家

吉野家の牛丼を久しぶりに食した。牛丼は日本が世界に誇れるファーストフードだが、あいにくあまり食する機会が無かったのだ。というのも私の家内は肉がダメなので一緒に外食する時は肉以外のメニューが選べる店になってしまうし、一人の時には習性的にカフェスタイルの店かあるいはラーメン屋に入ってしまうからだ。

といっても牛丼が嫌いなわけではない。1980年代、犬も歩けば吉野屋に当たるというくらい吉野家が乱立していた時代、24時間営業という便利さもあって結構利用していた。思えば今回の来店はそれ以来かもしれない。

牛丼は吉野家以前にも牛飯と称して街のすき焼き屋がサイドメニューとして売っていたと思う。しかしすき焼きの味付けはご存知のように甘く濃い。それをご飯に上に乗せた牛飯は美味しいのだが毎日は食べられない。甘くて飽きてしまうのだ。

ところが吉野家の牛丼を始めて食べた時、美味いと思う前にまず甘くないことが印象的だった。やけに粒の粗い七味トウガラシとベニショウガは吉野家の牛丼によくあい、毎日でも食べられるさっぱり感があり、これが後の多数出店の原動力となったのだ。飽きられる味では外食産業は成功しない。

しかし、吉野家はその後、良い味付けのノウハウを持っていながら、材料のコストを下げすぎ、牛丼の命とも言える牛肉の質を落とし、粉末醤油を使用するようになった。その結果、顧客離れを起こし、倒産の憂き目を見ることになる。店舗を増やすことばかり考えて、味をないがしろにした結果である。西武流通グループの傘下となった吉野家であるが、二度とその轍を踏まぬようトップの決意は固いものと推測される。

さて、久しぶりの牛丼の味はといえば、これは今までになく美味しいものだった。むしろ20数年前の牛丼より美味しいし感動がある。しかも280円。味噌汁となまたまごがついて380円という値段は、予算的にもコンビニ弁当に勝てるし、なにより食事をしたという充実感があるのが嬉しい。

一時期はどうなることかと心配だった吉野家D&Cもこの味を守るなら、しばらくは安泰であろう。そう実感したのであった。

2003/01/05

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