ファミレスのキッチンでは揚げ物が便利。何しろでフライヤーに食材を落としてタイマーかけておけば、あとはほっといても揚がる。その間にサラダを作ったり盛付け台を用意したり色々できる。揚げ物はボリューム感もあるし、素材が冷凍でもそこそこ美味しくあがるのがミソ。

これだけファミレスが乱立し、どこの店も四苦八苦しているのに結構生き残っているのがとんかつ系のレストラン。とんかつ和幸やとんかつ太郎など元気がいい。ほかにもとんかつ屋は個人商店も多く、居酒屋などがどんどんつぶれているのにとんかつ屋だけはへーきな顔している。じつは、とんかつ屋の強みは家庭ではできないその調理方法にあるのだ。真似できないノウハウというのはじつに強みである。

ファミレスではとんかつと言えども15分で出さなくてはいけない。15分を逆算していくと、揚げる時間は更に短くなくてはならず、せいぜいかけても10分。デニーズなどでは揚げ時間6~8分、油切りで1~2分必要だから、オーダーが入ったら即落とさなくては15分でディッシュアップできないのだ。

ところが、本当のとんかつは揚げる時間に15分以上かける。そうやって揚げたとんかつはファミレスのとんかつ比ではない。もし時間がかかるとんかつ屋を知っているならそこはオススメである。なぜなら本当に美味しいとんかつの揚げ方を知っている店だからだ。

とんかつに使う豚肉というのは肉のなかでも特に油で揚げるのに適した肉といわれる。その理由は豚肉に含まれる脂にある。この脂のおかげで豚肉は低温で揚げても肉汁が外に逃げ出さない。外に逃げ出さないという事は、揚げ油も吸収しないということ。つまり低温で揚げても油っぽくならないないのだ。これは豚肉だけにできる芸当。

とんかつの名人にその調理の秘訣を聞いてみた。揚げる油の温度は150度だそうである。これで15分以上揚げる。この15分は目安で、素材によって微妙に変わるそうだ。そしてもう一つなべを用意し、そこにも油を沸かす。こちらの温度は200度。150度でじっくり揚げたとんかつを200度のなべにいれて2度揚げする。からりとしたら、できあがり。200度の油といったら、酸化していると煙が出る温度だから、良い油で無いと使い物にならない。

とんかつは職人技が生きる料理。だからとんかつ店はファミレスが乱立してもちっとも怖くないのだ。

2003/06/22

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