私はもともとは中華出身だが、中華それもラーメン主体の店の場合、夏の厨房はそれはもう地獄である。

ラーメン店だからゆで麺機はガス全開、そしてスープの寸胴も火を落とせない。ほかに仕込みがあれば更に熱気が充満する。当然厨房にはエアコン完備しているが、そんなもの役に立つはずがない。特に中華鍋を振る際には大きな換気扇をブン回す。エアコンからのほのかな冷気などあっという間に外に吐き出される。そんなわけで夏のランチ時はほんとにどーっと絞れるくらい汗をかく。

自分の店だか、暑くて自分が汗をかく分には仕方がない。しかし、そこで働く従業員はたまったものではない。そこで登場するのがスポット冷房。厨房全体を冷やすのではなく、持ち場に冷風があたるようにする、つまり冷風扇風機である。これが結構快適なのである。

スポット冷房はいまどきのレストランの厨房はどこでも完備していると思う。レストランだけでなく、工場や開放状態の作業場などでも活躍している。熱気にあてられて熱中症になったら命にかかわる。もし従業員死亡事故になったら労災保険が適用になるが、当然事業主の責任も免れないので、職場の環境には日頃十分気をつけておく必要があるだろう。

スポット冷房は部屋を冷やすわけではないので、いわゆる負荷計算方法は人が何人働くかで決まる。エアコンの能力はHPで表すが、大体一人当たり1HPで計算すればよい。3人働く厨房なら3HPというわけ。結構馬力が入るが、それでも部屋全体を冷やすよりは安上がりだ。

部屋全体を冷やすわけではないから、吹出し口から70cm~1m付近に居ないと涼しくはない。したがって、あまり動かなくてもいいように、手元に必要なものを近づけておこう。吹出し口は一般に塩化ビニル製フレキシブルダクトがついて調整ができるので、これは当然自分のほうに向けておく。ちなみにこのダクト、「象の鼻」という。ダクトはなるべく長いほうが調整できていいが、厨房の場合はコック帽が邪魔になることがあるので、あまり長くても使いにくい。

しかしスポット冷房をつけていても、厨房というのは吸気ダクトと排気ダクトでバランスをとって常に強制換気されているので、涼しくはない。客席とは天国と地獄の差があることには間違いない。そこで裏技。前述のように厨房には吸気ダクトがある。これを閉じてしまえ。すると、排気ダクトのファンに誘引されて客席の冷気が厨房に引っ張られる。あっという間に厨房が冷気で満たされるというわけだ。ぜひお試しあれ。

2002/07/21

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