今日は近所にできたロードサイド型大型お好み焼き店を紹介しよう。

店の名前は「道とん堀」。「道頓堀」ではなく「道とん堀」である。お好み焼き店なので大阪出身かと思いきや、本部が東京にあるフランチャイズチェーンである。店のシンボルは「たぬき」。店前におなじみのアノ「たぬき」の大きな置物が客を出迎える。

一見して、金がかかっていない店ということがわかる。入り口の引き戸は自動ではなく、手動。つまり一般住宅用の引き戸である。中に入ると銭湯式の靴箱があり靴を脱いで上がる。客席は掘りごたつ式のテーブル席と大広間に座卓を並べた客席と半々くらい。

お好み焼きといえば最近は広島風と謳い、厨房で焼いたものをテーブルまで運んでくるスタイルが多くなった。しかし、ここは昔スタイルの目の前の鉄板で自分で焼くスタイルを採用。無煙ロースタータイプではないので煙が上がるし油も跳ねる。壁には換気扇が並び、暑くなれば窓を開ける。営業を長く続ければ店の中はそれなりに油染みてくるだろう。しかしそれも狙いの一つかもしれない。

この店、オープンして半年以上も経つが、いつも混んでいて盛況である。お好み焼き、もんじゃ焼き関連はその料金の安さもあってどこの繁盛しているように思える。競合が少ないのも一因と思う。例えば競合の激しいイタリアンレストランを今更やろうという御仁は多分皆無であろう。しかしお好み焼きは面白い展開ができるかもしれない。

この店で特筆すべきは、その接客言葉である。いらっしゃいませ、ありがとうございます、ではいまどきのお客は驚かない。しかし「4名様入ります、ぽんぽこぽん」には驚いた。しかも、従業員全員がその後に「ぽんぽこぽん」と続くのである。この掛け声は「いらっしゃいませデニーズへようこそ」以来のヒットだと思う。

チーフ格の店員に「なんでぽんぽこぽん、というのか?」と尋ねてみた。それによれば「道とん堀」という店名はもちろん憶えてもらいたいが、それよりも「ぽんぽこぽん」と掛け声をかけることで、より親しみを憶えてほしいという願いがあるという。「道とん堀に行こうよ」ではなく「ぽんぽこぽん」に行こうよ、という気軽さ親しみ安さを狙ったものだという。しかし、言う時には今でもじつは恥ずかしい、と笑いながら漏らしていた。

店の名より、たぬきというシンボル、そして「ぽんぽこぽん」という掛け声に外食産業の新しい息吹を感じた。

2002/04/28

関連記事