人間、朝食は最も大事である。「朝飯前」という言葉があるが、これは「朝飯をとる前にだってできてしまう軽い仕事」という意味だが、逆説的に考えれば軽くない通常の仕事は朝飯を食わないとできないということである。しかし、忙しいサラリーマンの場合どうしても朝食はおろそかになりがち。一人住まいの場合はなおさらである。
そんなときオフィス街の片隅から漂うコーヒーの香りは魔物だ。「モーニングセットあります」の看板に迷うことなく入店してしまう。コーヒーにセットされるのは香ばしいトーストにジャムとバター。これに「ゆで卵」が付けばいうことはもう無い。
そもそもモーニングセットとは、オフィス街で勤務前のサラリーマンを相手に喫茶店がモーニングコーヒーを売るためトーストとセットにしたのが始まりだと思う。香り高いコーヒーと上質なトーストは朝の目覚めに必須である。
ランチを500円で済ませたいサラリーマンにとって、モーニングに対する要求は厳しく、せいぜい300円くらいである。朝マックを売りたいマクドナルドもターゲットは300円~400円にとってある。
イタリアンレストランのサイゼリヤは通常店の場合は11時からの営業だが、24時間営業の店はモーニングセットを展開している。これが安いのはいいのだが、筆者が訪問した店の場合、お世辞にも誉められたものではなかった。
種類はオリジナルモーニングセット380円のが2種、イタリアン モーニングセット480円が2種。その他イタリアアンサンドイッチセットやリゾットセットなど結構バリエーションがある。いずれもドリンクバー付だから価格的にはありがたい。
しかし、使われているパンがパサパサ。中に挟んであるハムやソーセージもパサパサ。リゾットはぬるい。極めつけはドリンクバーのエスプレッソマシンが故障で使えなかったことである。サイゼリヤでドリンクバーが使えないとはこれは手痛い。サイゼリヤに来る意味が無いといっていいほどである。
サイゼリヤは定番メニューの出来がいいだけにこのモーニングセットには失望した。こんなモーニングならやらないほうがマシである。モーニングなんか無くたって定番メニューでも十分安いのだから。もっとも訪問した店舗固有のオペレーションミスだと思うが。
ファミレスの場合、ことモーニングセットの関してはまだまだ安かろう悪かろうのフシがある。客の支払う予算が限られているとのことだろうが、ホテルでは朝食は大体どこも千円はとる。その代わりそれなりにいいものを出す。
だいぶ昔であるが、第一ホテルの和朝食は8品付いて千円だった。これは人気商品で下手すると宿泊者以外はお断りになってしまうこともある。豪勢な朝食はその日1日をいい気分にさせてくれる。そんな朝食がファミレスにも現れていい頃ではないか?
2002/10/27