賄い食が大流行だそうです。でもこれってちょっとヘン。賄い食はあくまで内輪のご飯。お客さんに出すものではないはず。
賄い食は残り物を利用して厨房の職人たちが食べるご飯。厨房は忙しいから早くできて食べやすくそして原価が安くなくてはいけない。その中で美味しさを追求したのが賄い食だ。職人の食生活がかかっているから安くて美味しい。つまり安い、うまい、早い。
私も自分の店でよく食べていたのがチャーシュー丼。ご飯にラーメン用のチャーシューを乗せ、ネギを散らしてラーメンのタレを少々。唐辛子をかけるとうまいです。これはバイト諸君にも人気があって、のちに正式にメニューに加わったといういきさつがある。
巷で人気なのがパングラタン。「パンでグラタン」などというパンがあればできちゃうというレトルト食品も売り出し中。このパングラタンはフランス料理の厨房で生まれた賄い食です。フランスではパンにうるさい。時間の経ったパンはお客に提供できない。あまったパンにホワイトソース、チーズを乗せて焼いたのがパングラタン。
ディナータイムに人気なのがオニオングラタンスープ。じつはこれも朝焼いたパンの余りものでできたスープ。ディナータイムに似合うオニグラですが、むしろ前日のパン、前日のブイヨンの残りを再利用した朝メニューといえるものなのだ。
日本にも伊勢うどんという賄い食をルーツとするうどんがある。これは太いうどんにたまり醤油をベースにしたつゆをかけただけというシロモノ。見た目は悪く、またうどん自体もコシがあるわけでもないが妙にハマるらしい。賄い食は安く、またさっと作る手早さに美味しさがあるように思える。
さて、ファミレスで働く諸君は残念ながらこのような特別な賄い食にありつけることはまず無い。なぜならファミレスは基本的に食材が管理されており、お客に出すか、あるいは廃棄だからだ。あまった食材をもらって帰ることも本来許されない。
ファミレスの場合、従業員は正規のメニューを社員割引で食事に利用する。そばの出前や外に食べに行くことも許されない。弁当の持ち込みを禁止しているところもある。持ち込みは食中毒の心配があるということで許されていないのだ。さすがにこれについては抗議した。人権侵害もいいところである。そのくせ、ご飯を切らすとよその牛丼屋に借りに行ったりする。ファミレスでのご飯がいつもの味と違うと感じたら・・・それはもしかしたら隣の牛丼屋のご飯をレンジでチンしたものかもしれないですよ。
賄い食は別の意味での食文化。それに触れることのできないファミレス従業員は違う意味で哀れである。
2002/02/03
関連記事
- 投稿タグ
- 従食