安くてまずい店はしょうがない。高くておいしい店は当たり前。高くてまずい店は論外。そうではなく人々が欲するのは安くておいしい店。そういう店ならば人は集まり繁盛する。飲食店の経営はニーズはこのように決まっているので後はそれに応えればいいのだ。繁盛店を作るのは意外と簡単。

ところが、なかなか安くておいしい店というのはできにくいものらしい。私は最近某社の社長とランチをご一緒することが多いのだが、金に困っていない社長が行くところは決まって汚く、そして狭く、駐車場もなく、店員はおばちゃんおじちゃん、下手すると小学生くらいの子供が接客をする店だったりする。児童福祉法なんか関係ない。しかしこういった店が安くそしておいしいのだ。昼時ともなればサラリーマンが奥の仏間まで占領する。

こういった隠れ家的な店は往々にして設備償却がない店である。再投資もあまり考えていない。つまり店主が食えればいいのだ。欲がない。儲けようとしない。お客さんにおいしいものを提供できればいい。あまり原価率や利益率というものに関心がないから、採算度外視で料理を提供する。

たとえば最近入った魚屋は奥が座敷になっていて、昼は定食を食わせる店となる。ここの刺身定食は1,000円だ。魚屋だから間違いのない飛び切りの刺身が出てくる。たとえば中トロ丼なんてのもある。これがなんと1,500円。安いか高いかは食べて見ればわかる。この店がどこであるか残念ながら教えることはできない。某社長の隠れ家だからである。

さて、こういった店にファミレスは対抗できるのかといったら、まず無理だろう。償却なし、原価率無頓着の店に営利企業が敵うわけないのだ。しかしウチは客層が違うからとか、ファミリー相手だからだとかいうファミレスの言い訳は通用しない。人間ならばだれしもこういったおいしく安い店を欲していることに違いはないからだ。ということはもしかしたら、お客は「仕方なくファミレスを利用している」のかもしれない。

仕方なく・・利用されている。こういった業者が行う商売を殿様商売というが、これはその間隙を縫うような業態が現れたとき、あっという間に廃れることを念頭においておこう。

ちなみに便利だけど高いコンビニは、安くて品質のよい商品を提供する代替産業が現れればあっという間に衰退すると思う。だれかやってみませんか?

2003/08/24

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