元気の良かった外食産業界も、1999年あたりから売上高で軒並最大20%の前年割れとなり、現在でもその決定的な打開策がないままズルズルと減益の方向に進んでいます。まさに業態のあり方そのものを根本的に考え直す時期がやってきたといえるでしょう。

今まではオペレーションをマニュアル化し、それさえ守っていればどんな人でもできるという人材養成を根本に、多店舗展開をしてきたわけですが、過当競争の時期に入り、またニーズが多様化し、コンビニをはじめ他業種間競争というデフレスパイラルで過酷な世界を生き抜くには、今までのやり方では駄目だということに早く気づくべきです。

そもそも飲食店とはなんでしょうか?食事を提供する、雰囲気を提供する、サービスを提供する・・色々ありますが、まとめれば「喜び」を提供することに尽きると思います。しかも「喜び」は食べることだけではなく(レストランなのに!?)多様化しており、それに応えるにはコンセプトを明確にし、他店との差別化、オペレーションを含めた総合的なレベルアップが不可欠になってきます。

さてデニーズのハナシをします。デニーズはファミレス御三家といわれるほどの老舗です。ですが創業当時は確か「アメリカンコーヒーショップレストラン」だったはず。いつのまにかファミレスになってしまったようです。

コーヒーショップレストランとは、すかいらーくがファミリーを狙ったコンセプトであったのに対し、24時間営業でアメリカスタイルの軽食やコーヒーのお替わり自由をウリとしたもので、当時新鮮だったのを記憶しています。いわばコンセプトが明確でした。従って、ドライブ中でもすかいらーくやロイヤルホストを通り越してデニーズに来店する意味があったわけです。

それが今はどうでしょうか?ファミレスはどこも同じ・・世間がそう見てるのを裏付けるように見事に同じ様なメニューをやっています。従ってデニーズに来る途中にすかいらーくがあればすかいらーくに入ってしまうし、あいにくデニーズが休みのときには、他のデニーズに行くまでもなく近場のサイゼリヤあたりで済ましてしまう。これはひとえに他店との差別化ができていない紛れもない証拠といえるでしょう。

デニーズは一体何屋さんなのでしょうか?一度社員の方に聞いてみたことがありますが明確な答えは返ってきませんでした。社員がわからないんだから我々がわかるはずもない。

この際ですからもう他店の真似はやめて店長(店のオヤジ)の顔が見える個性的な店作りをしましょう。オムレツを20種類ぐらいやって他店で絶対真似のできない店を作ってしまいましょうか?オムレツは難しいですよ。昨日入ったバイトにゃできません。下手すると店長でもできません(デニーズ某店では良く床に落としていた)。それともデニーズの原点とも言われるドーナツをお客の目の前で揚げて提供しますか?それもいいと思います。

今必要なのはコンセプトの明確化と他店との差別化です。「デニーズだからこそ私は働く、他とはちょっと違うぞ」と社員が誇りに思う・・そういう店であってほしいと思うのです。

ところで、デニーズの一部店舗では今でもカウンター席があります。これこそコーヒーショップレストランの名残り。しかし新店舗ではほとんどボックス席になってしまい、カウンター席は姿を消しています。出勤前の朝のひと時をカウンターで過ごす。きれいなウエイトレスさんとコーヒーを飲みながら一言二言世間話。カウンターならではの光景だったのですがねー。

2001/09/02

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