居抜きとは、新しい店の経営者が、以前あった店の設備をそのまま生かして新しく営業を始めることをいう。設備をそのまま使うので、経営母体は同じではないが業態がほとんど同じであることが特長である。在庫を持たない飲食店では、つぶれた店に残った設備をそのまま生かせるので、居抜きは飲食業界ではよく行なわれる。

ファミレスの世界でも新進企業が老舗の店舗を居抜きで買い取り、全然違ったファミレスになっていることがままある。私の近所でも街道沿いのデニーズがびっくりドンキーに変わったのが4年前。1年前には、県道沿いのCASAがやはりびっくりドンキーに変わっていた。サイゼリヤもよくこの手を利用する。レッドロブスターがいつのまにかサイゼリヤになっていたりするのだ。

しかし、店舗というのは客席だけではなく、提供するサービスによってデザインされなければならない部分が多い。特にサイゼリヤなど少人数で接客を賄う業態は、特に重要だ。従業員の導線は特に吟味されなければならない。

普通ファミレスの客席は折れ曲がった鍵形をしている場合が多い。24時間営業の店の場合は、半分をクローズドにし掃除をするのに都合が良くできている。また禁煙席を分ける場合もある。ところが、このかぎ型店舗は反面見通しが悪く余計に人員が必要になる。サイゼリヤなど人員が少ない店では苦労することになる。

居抜きの場合、設備もそのまま残っているが、メニュー構成等が全く違う場合などほとんど使えないことのほうが多い。下水なども良くチェックしないと油で固まっていたりする。冷蔵庫裏側もゴキブリの宝庫だ。居抜きで売らなければならなかった事情を察すれば致し方ないところ。余計な経費はかけられなかったろう。

居抜きの店を買い取って、新しく営業を始めその後成功した場合、前に入っていた企業はいったいどんな思いであろうか?不採算の理由は「立地が悪いからだめだった」はずである。だとしたら新しい店でもダメなはずである。ところが、びっくりドンキーにしても、サイゼリヤにしても同じ店舗で大繁盛である。

居抜きで売らなければならなかった老舗のファミレスは一体どう言い訳をするのだろうか?

2002/03/31

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