つくば市界隈には謎のレストランが多くある。
一時期有名だったのは世界でも珍しい「水族館レストランつくし」。交差点の最高の立地に有りながら、熱帯魚を泳がせた水槽が並んだ店内は異様で、全く客が入らなかった。よくあるエンタテイメントレストランを気取ったのだろうがセンスがまるで無い。その結果誰もが知っている「有名では有るが誰も入ったことの無いレストランナンバーワン」の異名を獲得した。
ここの母体はビジネスホテル「つくし」、つまり旅館業が本業。当然飲食部門は欠かせないからそれなりのノウハウはあった。弁当のデリバリーにも力を入れており決して不味くない、いやおいしいといえるほどだ。なのに水族館レストラン。これは話題提供にはなったか完全に失敗作だ。残念ながらというか当然ながら今は営業していない。
その往年の水族館レストランに負けないレストランが旧国道6号線沿いにオープンしている。パチンコ屋居抜きを利用したこのレストランの名は最初は「ビアント」だった。「美案人」と当て字していたこのレストラン、どうもイタリアンレストランらしいのだが、しかし、あまりのセンスの無さにオープン一ヶ月もしないうちにリニューアル。
リニューアル後は、パチンコ屋の元大きな看板に今風のワインとピザのイラストを配し、かなりのセンスアップ。名前もサンマリノとイタリアらしい名前になった。その看板イラストから、サラダバーとドリンクバーがあり、しかも自家製パスタに薪で焼くピザ釜があるらしい。これだけで随分と内容がわかり来店意欲が増す。
それにしても、パチンコ屋からイタリアンレストランへイメージアップするのは至難の技。しかも居抜きである。元の四角い建物にギリシャ神殿風の目隠しを周囲に張り巡らすも、間からは元のパチンコ店の建物が見えるし、神殿風の飾りも裏から見えてしまっては大道具のようで台無しである。昨日からまたなにやら工事をしている。どうも神殿風のアーチに板張りの目隠しをしているようだ。やれやれ。
このレストランがどういう経営をしようが知ったこっちゃない。しかし、大いに間違えている部分は建物を居ぬきで利用しようとするその素人根性だ。
建物を特に店舗として使うには、店舗として機能しなければならない。もとの建物はパチンコ店である。飲食店ではないのだ。飲食店として機能させるには最初から見直さなければならないし、そのコストを試算できた時点で、新しく建てた方がより機能的コスト的に有利であることは意外と簡単に判断できるものなのだ。
元々ある建物を再利用しようとするには、もともとの建物が煉瓦造りであるとか土蔵であるとか特別な理由が無ければならない。そうでない場合はまっさらから店舗設計を見直したほうがよい。店舗はビジネスの道具である。当然その道具はプロ仕様でなければならない。道具がよくなければいい仕事は出来ない。これは業界の常識である。
機能しない店舗を機能させるには思いのほか金がかかる。この店もそうだ。多分永遠にリニューアルを重ねることだろう。パチンコ店の新装開店のように。肝心のお味の方はどうか?残念ながら入る気もしないのでパスさせていただく。
2002/06/30
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