多くの産業のうち、飲食業は特にクレームの発生しやすいビジネスだと思う。食欲は人間の3大欲求の一つだし、それを満たすことを提供をする飲食業はかなり真剣にやらなければならない。当然接客はその道のプロがするものであるし、それが正道だ。

にもかかわらず、アルバイトで店舗運営することを前提としているファミレスは、ここがつらいところ。アルバイトでもできる人間はいる。しかし、できない人間のほうがはるかに多いし、教育にも金がかかる。人材不足はその業態でもあることだが、ファミレスの場合は根源的悩みといえる。

アルバイトによる経験不足、接客のミス、調理ミスは必然顧客からのクレームになる。接客態度、オーダーミス、料理への異物混入、盛付け間違いなど、数えたらきりがない。それでもなおかつアルバイトを使っていかなければならないのだ。

最近大手ファミレスでは店長自らフロアに立ち、ウェルカムをしているところが目立つ。これはとてもよいことだ。ともすれば管理職は通常業務に追われ、事務所に引きこもりがちだが、これでは数字は見えるが店と客が見えてこない。数字の上がり下がりも事務所内では確認できるが、なぜ下がったかという原因は事務所にいてはわからない。原因はフロアにこそあるのだ。ファミレスの原点は毎日の接客と調理にあることを店長以上の上層部は知る必要がある。

大手ホテルには役員の中に必ず調理長が名を連ねている。ホテルといえば接客の最高峰。その企業の役員に調理担当がいるということはレストラン部門がいかに重要かを物語っている。役員は形骸化してはならないし、だからこそ現役の調理長が役員に名を連ねているのだ。調理長はもちろん毎日厨房に立っている。

さて、ファミレスの店長はどうか。どちらかというと「接客のプロ」とはいえるが、調理のプロとは言いがたいのが現状。できれば調理のプロでもあってほしいと思う。もっともレトルト食品を多く使うファミレスでは調理のプロが育つことは難しい。

ところで、アルバイトを多く使うメリットもある。それは従業員年齢が若いということだ。学生アルバイトのほとんどはあまりことを深刻に考えない。どんな仕事でも楽しく遊びのようにこなす。この軽さが正社員の心の癒しになっているともいえる。高級料亭ではないのだから、この軽さ、若さもファミレスには必要であると思う。

若いアルバイトがはがんがん仕事はするが、ミスもたくさん犯す。その場合、店長は一生懸命謝って回ろう。店長とは謝るのが仕事。謝る回数が多いほど、仕事をしているといえるのだ。

2003/03/23

関連記事