千葉県内房に竹岡港という小さな港がある。そこの漁師たちに絶大な支持を得て育ったご当地ラーメンがある。それが竹岡式ラーメン。この竹岡ラーメンの元祖といわれるのが「梅の家」。創業は昭和29年というから約50年半世紀という歴史を持つラーメンということになる。

木更津南インターを出て国道127号線を南下すること約20km。竹岡地区に入ると左側に見えてくるのが「梅の家」。うっかりすると通りすぎてしまいそうな小さな食堂。国道側には駐車するスペースもない。しかし店の前の路地を入ると奥に専用の駐車場が用意されていた。駐車場は車で一杯である。駐車場にまで醤油のいい香りが漂ってくる。

行列を覚悟して行ったが、お昼を過ぎていたのでちょうど席が空いてラッキーという感じ。店員は女性のパートさんと思える人が5人はいただろう。てきぱきとしたなかにもアットホームな雰囲気がある。お世辞にもきれいとはいえない店内で注文したラーメンを待つ。

5人の女性店員は世間話をしつつてきぱきと仕事をこなす。繁盛店ならではの動きだ。ラーメンは昔ながらの小さめのラーメンどんぶりになみなみと注がれたスープ。当然こぼしながら運んでくる。ラーメンを運ぶお盆はつゆだらけ。テーブルもつゆだらけ。お客もつゆだらけ。店中つゆだらけ。

竹岡式ラーメン

竹岡式ラーメン

ここのラーメンは世間一般に言われるラーメンの尺度からしたらたいしたことの無いラーメンと思われるだろう。まず、麺が乾麺である。ラーメン屋で乾麺を使っているところは本当に珍しい。しかし乾麺を使うのはそれなりのわけがあるようだ。乾麺はほぐれたころが茹でごろというゆで加減がやさしいというメリットがある。不慣れなパートさんでもそれなりにクオリティが保てる。

また、乾麺を茹でる鍋は普通の家庭用の鍋。ところがそれをかけるコンロは炭火七輪。これにもわけがあり、七輪には乾麺のうまみを出す火加減が可能とのこと。そしてラーメンのスープはチャーシューの煮汁をお湯で割っただけ。つまり骨からだしをとらず肉汁を使う。薬味はたまねぎのみじん切り。これをどっさりと盛る。

つまり、麺は乾麺を使い炭火七輪で茹でる。スープは骨からではなくチャーシューの煮汁をお湯で割る。チャーシューはどっさり盛る。薬味のたまねぎもどっさり盛る。そして値段は安い。これが竹岡式ラーメンである。この竹岡ラーメンには亜流があり街道筋には多くの「竹岡ラーメン」がある。しかし元祖は「梅の家」だそうな。

いまや全国行列のできるラーメン店のレベルは相当高い。そのレベルで比較してしまうとインスタントラーメンに近い竹岡ラーメンはちょとつらいものがある。しかし、地場のお客に密着し、50年も支持されているこのラーメンを飲食関係者はぜひ味わってほしい。地元食堂で支持される味がいかに簡潔明瞭かを再認識させてくれるラーメンである。つまりこういうものアリなのである。

あ、訪問するときはオシボリもしくはウェットティッシュを持参するといい。何しろつゆだらけなので。

竹岡式ラーメンの元祖「梅の家」訪問記

ラーメン450円
チャーシューメン550円
薬味30円
営業時間8:30~19:00
火曜日定休
連絡先:0439-67-0920
千葉県富津市竹岡401

2003/08/03

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