2003年3月23日、サイゼリヤ鴻巣店において客の注文したミートボールが原因で食中毒が発生した。事件の概要は、オーストラリア産のミートボールを加工する際に使用する食品添加物のポリリン酸ナトリウムが白い塊のまま混入、それを食べた客が異常を訴えたものである。

食中毒というにはいささか語弊がある。喩えていうならミートボールに塩の塊が入っていて、それを食べた客がしょっぱさのあまり口が曲がった、というところか。しかし食品添加物とはいえ異物混入であることには違いなく、同社にとっては手痛い教訓となったことだろう。中毒菌に拠るものではないため集団で発生しなかったのが救いである。

感心したのは、サイゼリヤのホームページのトップページでちゃんと謝罪と今後の対応を明確にしている点である。世の中に企業のホームページはごまんとあるが、こういう事故が起こったときにちゃんと対応していない企業が残念ながら存在するのである。社会的影響のある事件を起こしときながら、トップページでのんきに通販なんかしている企業はその体質を疑ってしまう。こういうところにリスクに対する企業の姿勢が現れるから面白い。その点サイゼリヤは合格である。

ただしトップページにあるカウンターはいただけない。一体誰が見るのか?上層部用の自己満足用なら隠しカウンターにするとかいろいろ方法はあるだろう。サイゼリヤのウェブマスターは他企業のホームページを見て研究することをオススメする。いまどき優良企業はカウンターなんぞつけてないぞ。カウンターはアマチュア向きのツールだ。

話がそれた。しかし私がサイゼリヤ在職中思ったことだが、この会社はいつか食中毒事件を起こすと確信していたのも事実。とにかく当時のサイゼリヤは衛生管理がなってない。というより店長以下衛生管理の知識が欠落しているのだ。たとえば火傷をした社員が包帯を巻いたまま平気でキッチン業務をしていたりする。オーブンを扱うから火傷事故は多い。しかし火傷の傷は食中毒菌の宝庫でもあるのだ。

少ない人数で店を運営しているから火傷ごときで休めないという弱みもある。しかし飲食店で包帯を巻いている従業員がいたら、お客はまずぎょっとする。そしてその人間が調理をしていたとしたらますます仰天する。しかし、社員はなぜお客が仰天するかわからないのだ。包帯を巻いた従業員が店内をうろついているのが何よりの証拠。

本部から食中毒予防に関する通達はあると思う。その証拠にアルコールスプレーは存在した。しかし、それを使うマニュアルはなかった。アルコールスプレーを使っていたのは私だけだった。ちなみにどこのファミレスでも常備している調理用の手袋の用意もなく、私は自前で手袋を用意した。この手袋は指に怪我をしたときや手あれのときに、雑菌が料理につかないようにするためのものだが、それ以上に多少熱いものでも手づかみできるという利点があり、一人キッチンで大忙しのときは結構重宝するのだ。

デニーズなどファミレスの老舗は、その歴史は「食中毒を出さない」闘いであるといって過言ではない。チェーン店で食中毒を出したらすべての店に影響する。雪印を引き合いに出すまでもなく命取りにもなりかねないのだ。事の重大さを知っている。だから食中毒防止のためにはコストを惜しまない。衛生管理のレベルは高い、それが老舗である。やっとその痛みを知った青年サイゼリヤの今後に期待したいと思う。

2003/04/06

関連記事